夜の聲(声)藤田文江

     若葉の頃

男 『僕に惚れちゃ駄目だぜ』

女 『わかってるわ、貴方こそ私に惚れない様気をおつけなさいな』

二人は朗らかにわらいあった。

そこでGの字の様なむずかしい顔をした

空の下で

男は堅パンの上にローソクをともした。

女 『それ呪い?』

男 『うん呪い、惚れ合わぬという呪いさ』

二人は泪を流して火をみてよろこんだ。


女は夫を男は家にある妻を憶いだしたが

妙にそれ等は風船の様に軽く何処かに飛んでゆきそうであった。


     夜の聲

夜の聲(おまえ)は何故ここまでやって来た。

おまえの咳を聞いてると

私はたまらなく寂しくなる。

然し私は私の 里 おまえに媚びるよ

私はおまえと共にある時

ほんのわずか富んでいるのだから。


     無題

氷の如く音を噛んで

金色のうすもやゆるるあかつき

はじらいにまみふせておちてゆく青春!


すべて自由ならじと思う

胸に穴をうがつ

肉体のきしみ。


 




藤田文江  年譜
1908(明治41)年、鹿児島県大島郡名瀬村大字伊津部に生まれる。2歳で鹿児島市に戻り、3歳から15歳
まで台湾生活。外地育ちだった。

この『夜の聲』にであったのは、6年前・・・本屋にぶらっとより、特に読みたい本があった訳ではなくただ店を
歩いて見て回った時のことー。片隅に詩集コーナーが目にとまり、そこで白表紙の小さなこの本が、何故か?
気になった。年譜に24歳で急死の文字に余りにも若すぎる死とこの現代に出版された詩人に深い興味を持ったのであるー。
 最も関心をもったのは、この詩の清廉さ、そして女性が現代詩を書くなど、アカがかった行為とみられた時代に
自己深化につとめ美の空極を目指した、至高性は強靭さとなって作品に表れています。

どこか魔性を帯びた男っぽさに、吸い寄せられましたー。

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Theme: みんなに紹介したいこと
Genre: ブログ

Comment

  • マークンのママより
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Re: タイトルなし

鬼平さん、美しいコメントありがとうございます。

  • 鬼平
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なんて切なく美しい映像なんでしょう。

  • マークンのママより
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Re: 生き直し

りゅうさん、誰しも一度や二度いや、何度も人生やりなおすことができたらーと思う事はありますよね。
ママなんか、数えきれない程・・・辛いことを経験したひと程、人の痛みも解り人間的で魅力を感じます。
せめて、気持ちは、若くありましょう。来世より、今こうしてささやかな楽しみ共有していることが、ママは、嬉しく思いますー。

  • 切磋琢磨‘りゅう’
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生き直し

内地のラッパ節が与論で編曲された唄なんですが、今は沖縄で歌詞が変わって、それでは沖縄民謡の・・・という感じになっております。

‘主さんにゃ、立派な方がある・・・’、今日ライブに出演していた沖縄の若い唄者にそんなつらい思いをさせたかも知れない加害者の痛みを感じて、肩を落して帰宅しました。

お互い若返るためには、来世しかない・・・でしょうか。来世があるならもう少しましな人生を生き直したいです。

  • マークンのママより
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Re: 想い

りゅうさん、”十九の春”~
i-185思い出しましたか? いい歌ですね。でも与論民謡!?知らなかった・・・!

 造詣が深いですねぇー。(従弟自慢)随分お逢いしてませんから、お互いにおじさんとおばさんになってしまいましたね<りゅうさんは、まだまだお若いです。失礼・・・>
昔の頃に戻りたいものですね…。ママは19歳で、りゅうさんは9歳! あんまりかな(笑)

  • 切磋琢磨‘りゅう’
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想い

奄美群島南端、与論民謡の‘十九の春’を思い出した。
所、時代変われど、男女の間には相似形の想いがここかしこに発生するようである・・・。

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